私は柔道整復師免許を持つトレーナーです。
骨(こつ)を扱う国家資格者として、骨折しやすい部位の統計や受傷機転を把握しています。
高齢者の骨折で多い部位は、
・大腿骨近位部
・椎体
・橈骨遠位端
骨折は「転倒」だけが原因ではありません。
骨強度が低下した状態で転倒することで起こります。
骨密度はYAM値で評価される
YAM値(ヤムチ)とは、20〜44歳の健康な女性の平均骨密度を100%とした指標です。
・70%以下:骨粗鬆症
・70〜80%:骨量減少
・80%以上:基準範囲
まずは現在地を知ることが出発点です。
骨は刺激に反応する組織
骨は一生、「壊して作る」を繰り返しています(骨リモデリング)。
整形外科学の基本原理として、
骨は力学的負荷に応じて構造を変えることが知られています(ウォルフの法則)。
実際に、閉経後女性を対象とした研究では、
中〜高強度(1RM60〜80%)のレジスタンストレーニングを
週2回、6〜12か月継続した群で、
腰椎および大腿骨の骨密度増加が認められた
と報告されています。
増加幅は大きくはありませんが、統計学的に有意な変化です。
スクワットという選択
日本骨粗鬆症学会のガイドラインでは、
中〜高強度のレジスタンストレーニングが推奨されています。
代表的な種目がスクワットです。
・クウォーター:軸圧は高いが、軟骨や半月板への負担が大きい
→浅くしゃがむスクワット
・ハーフ〜パラレル:筋肉の牽引力も活用でき、実用的
→膝屈曲90度〜もも裏と床が並行までしゃがむスクワット
骨は「軸圧」だけでなく、
筋肉の牽引力によっても刺激を受けます。
※関節の状態に応じて選択することが前提です。
材料がなければ骨は作れない
骨基質の約30%はコラーゲン。
原料はタンパク質です。
目安:
・最低:体重×1.0g/kg
・理想:1.2〜1.5g/kg
材料不足では骨の形成は進みません。
材料を活かすための土台 ― ビタミンD
タンパク質やカルシウムを摂取していても、
体内で十分に活用できなければ骨形成は進みません。
ビタミンDは小腸でのカルシウム吸収を促進し、
血中カルシウム濃度を維持する働きがあります。
不足すると、体は血中濃度を保つために
骨からカルシウムを動員します。
この状態が続けば、骨量低下につながる可能性があります。
日本人の食事摂取基準(2020年版)では、
成人の目安量は8.5μg/日とされています。
材料(タンパク質)
土台(ビタミンD)
どちらが欠けても、骨は十分に作られません。
週1回と週2回の違い
骨密度向上が確認された研究の多くは、
週2回以上で設計されています。
・週1回:維持、または減少を遅らせる可能性
・週2〜3回:研究条件に近い頻度
安全に配慮をした上で80%程度の強度が推奨されています。
骨密度は6〜12か月単位で評価されます。
半年間の刺激量が、その後のYAM値に影響します。
なぜ私は学び直したのか
トレーナーとして活動していく中で、嬉しいことに生徒様に喜んでもらえる機会が増えました。
その喜びを一時のものにしたくないと強く感じ、
数年後から数十年後も皆さんの役に立つ指導をするため、
人体への理解をさらに深める必要があると判断し、専門学校へ入学しました。
骨は感覚ではなく、構造と生理で考えるべきものです。
現実
目的や目標はそれぞれです。
ご自身の目的に合わせて運動頻度を調整してみてください。
大腿骨骨折後に活動量が大きく低下する例があることも知られています。
将来の選択肢を広げるためにも、
今できることをコツコツ積み重ねていきましょう。
何をすればいいか(結論)
・現在のYAM値を把握する
・体重×1.0〜1.5g/kgのタンパク質を確保する
・60〜80%強度の下肢トレーニングを行う
・可能であれば週2回以上を半年継続する
維持を選ぶか、向上を目指すか。
違いは、頻度と継続に表れます。
※既往歴や服薬中の方は主治医と相談の上で実施してください。
参考文献
Watson SL et al. J Bone Miner Res. 2017.
Zhao R et al. Osteoporos Int. 2015.
Kohrt WM et al. Med Sci Sports Exerc. 2004.
日本骨粗鬆症学会「骨粗鬆症の予防と治療ガイドライン」



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